2020年03月31日付

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「おもてなし」の向上に取り組む個人、団体をたたえる第7回信州おもてなし大賞の表彰式で、大賞を受賞した天竜川鵞流峡復活プロジェクト代表の曽根原宗夫さんが、当日に体験したばかりの、おもてなしの好例を紹介していた▼表彰式会場の県庁前に開店45年の安くてうまいと評判の中華料理店がある。これを聞いた曽根原さんは開店前から並ぼうとしたが店内が暗い。閉店日かといぶかしんでいると、県庁の駐車場で車両整理をしている男性がわざわざ「大将を見かけたから、きょうは間違いなく開くよ」と教えてくれた▼待っていると、今度は道を挟んだ駐車場から大声で、「おーい、店が開いたよ」と呼び掛けてくれた。料理を堪能した曽根原さんは駐車場で男性と再会し、「おいしかったよ」と話に花が咲いたと楽しげに思い返していた▼新型コロナウイルス感染症の拡大で人と人との距離の感覚が変わりつつある。スキンシップは忌避され、感染者が多い地域からの移動がとがめられる。さらにまん延へと進んでいけば、差別につながるような暗い感情が、疲れた心に生まれてしまうこともあるだろう▼曽根原さんはエピソードの披露だけで教訓めいた話はしなかったが、日常のささやかな心遣いに「おもてなし」の肝があることを示したかったのだろう。ストレスのたまりがちな日々の中で、道の端に春を告げる花を見つけたような思いがした。

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