2020年04月02日付

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「社長の方針に異を唱えたのは入社以来初めてです」。富士見町で日帰り温泉施設の支配人を務める一戸彰さん(51)の声は少し震えていた。県外客の利用も多い施設が、町内に新型肺炎を持ち込む媒介になってはいけないと営業自粛を決めた▼ここに至るまで社内は議論が白熱したそうだ。「常連客が行き場を失う。町民のために営業を」との思いは強い。だが「感染源になってはいけない」との責任もある。客を思う気持ちは同じでも営業か休業か選択は相反する。約1カ月、悩み続けたという▼多くの経営者が同様の思いに日々揺れているのだろう。受注、消費が激減し、経営は苦しさを増すばかりで先も見えない。企業が体力を落とさない努力を続けることが地域のためであり、従業員の生活も懸かっている。しかし経済活動は感染を拡大させる危険もはらむ▼一戸さんが社命で富士見に移り住んで6年。地元の人の顔も見えるようになった。新型肺炎の感染拡大に危機感を強め、一刻も早い対処をと考えた時、「何より『町の人を守りたい』と思った」。役を辞する覚悟も持った決意だったろう。社長の言にも意を曲げなかった▼この局面、それぞれどの選択にも正解、不正解はなく、ただ自分がどう在るべきかが問われ続けている。一戸さんは「早く収束させて一日も早く再開させる。この一点に皆が心を寄せ、力を合わせられたら」と願っている。

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