2020年4月12日付

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アフリカに渡航する際、事前にさまざまな病気を防ぐためのワクチンを接種する。黄熱病、肝炎、髄膜炎菌感染症…すべてを打ち終わる頃には気が滅入る。さらに現地では、抗マラリア薬の服用が待ち受ける。それだけかかりやすい疾病が身近にある▼過去に内戦や難民キャンプの取材でアフリカ各地を巡った。現地での活動は身に降りかかろうとする病気や事故、盗難を防ぎながら前進する緊張感があり、日本へ帰るとほっとした。勇んで紛争地に足を踏み込めたのは「安全な日本へ戻れる」という保険のような感覚があったからだ▼新型コロナウイルス感染症が猛威を振るう。すでに世界で9万2000人以上が亡くなった。治療薬のない未知の病。医療体制が整うとされる日本も安心は保証されない▼災害など危険をはらんだ有事を、正常な日常生活の延長上と捉え「自分は大丈夫」と思う心理学用語の「正常性バイアス」が認知されるようになって久しい。社会の動向を見ていると、重症化するコロナ渦にあって、まだ事態を過小評価する意識が点在する▼致死率の高い感染症の流行を描いた映画「アウトブレイク」の中で、ダスティン・ホフマン演じる主人公の軍医サムは、若手軍医に「パニックは危険を呼ぶ」と教える。新型感染症の終息は治療薬が開発されるまでの長期戦と捉え、動向を冷静に直視し、感染リスクに近寄る行動を慎みたい。

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