2020年4月15日付

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「スマホの彼」と、心の中で呼んでいる。朝の通勤路で月に数回、車窓から見掛けるスーツ姿の若者は、スマートフォンを操り、画面に夢中のまま足早に歩く。気にするのはドライバーのみ。視線は1年近くも一方通行だ▼スマホ片手に道行く人は珍しくないが、彼は望むべからず脳裏に焼き付いてしまった。何十回擦れ違っても、顔を上げたためしがない。怖いほどの画面凝視、という表現が適当か。前方確認は?横から車が来たら?何度も血の気が引く思いをした▼昨年末、車両運転中にスマホや携帯電話を使用または注視する「ながら運転」が厳罰化された。一方で「歩きスマホ」を罰する規定はない。全国で歩行者の衝突や駅のホーム転落など関連事例が増え、人命が絡む交通事故を誘発する危険性もある。罰則の待望論が起きるのも当然だろう▼電気通信事業者協会と大手電話会社の意識調査で、約9割が歩きスマホを危険と感じつつ、半数が「することがある」と答えた結果が残る。情報獲得の欲求は理解するが、命の重さは便利さと天秤にかけるべくもない▼きょうまで春の全国交通安全運動。新型コロナウイルスの感染拡大で命の大切さが叫ばれる今だからこそ、毎日の交通安全にも気を配りたい。「スマホの彼」よ。さっき前も見ず無造作に踏んだ路上のしま模様、あれは横断歩道。左右を確認し、手を挙げて渡った幼少期を思い出してほしい。

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