2020年4月27日付

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作家カミュの小説「ペスト」は、海辺の人口20万人都市で死に至る感染症のペストが流行し、約10カ月間に及ぶ都市封鎖の中で生活した市民の姿を描く▼主人公の医師リウーは来る日も来る日も患者の治療と臨終に立ち合い、やがて別の病気で離れて暮らす妻と死別し、共にペストと戦った親友をペストで亡くす。物語の一節に「死んだ人間というものは、その死んだところを見ない限り一向重みのないものである…」とある▼身内や友人の死に立ち会う時の悲しみは、筆舌に尽くしがたい。新型感染症は世界で犠牲者を出し続ける。死者を見ずしても感染者の死を身近とする想像こそが、事態終息への歩み寄りになる▼近年ここまで世界的規模で多くの犠牲者を出した未知の病は見当たらない。現代を生きる私たちに過去の体験があれば、失敗を含めた前例を教訓とし、今に生かすことができるが、実際は多くの部分で模索が続く。現段階で想像すれば防げる新たな教訓につながりそうな失敗は避けたい▼かの小説では病がはやり始めた頃の様子を「人々は個人的な関心事を第一列に置いていた」と記す。だが病は一向にやまない。日本国内は大型連休を迎え、注意喚起が続く。事態終息のためには専門家の声に耳を傾け、時には個人的関心事への辛抱も必要だ。そして、休む暇なく感染症に携わる医療従事者の献身に感謝の気持ちを忘れないでいたい。

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