2020年05月01日付

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こんな時は遠くの大切な人へお菓子を贈ろう-。新聞の折り込みチラシの言葉が目に留まった。すべて手書きのその広告に、単なる売り込みではない切実さを感じた▼チラシを投じた富士見町内の洋菓子店キャトルセゾンの店主、名取京子さんは「都会にいる町出身の子どもたちは今、ふるさとに帰れず、独りでこの状況を耐えている。町内にはその子を案じて胸がつぶれる思いの親たちがいる。何とか支えになれないかと思った」そうだ。特別にしつらえた焼き菓子のセットは利益がない、と明かす▼町内では、家族の訃報で県外へ帰郷し戻った人の外出自粛を地元の女性たちが気の毒に思い、2週間交替で手作りの食事を運んで生活を支えたという。富士見高原のホテルでは地元のお年寄りが持ち帰りの弁当を買い求めて、苦境の施設を励ましているそうだ▼例年なら普段離れて暮らす家族が顔を合わせ、日常とは違った楽しい体験をして心身を癒やす5月連休。家族は思いをこらえ、地域は誘客の最盛期を失して倒産の危機に瀕しながらも、地域外からの流入を断とうと必死だ。病院では休日もなく命懸けの救命が続いている▼新緑そよぐ風はさわやかで、花咲き乱れる野は心を誘う。けれども地元の、世界の皆が積み上げている我慢と他者への思いやり、苦境を支え合う心を決して無にしないように、踏みにじらないように。浮き立つ心に念じたい。

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