2020年5月3日付

LINEで送る
Pocket

換気のために窓を開けた。吹き込んできたのはもう夏の風だった。田んぼにも水が入り始め、田園地帯を抜けてくる風に爽やかさが感じられる頃になった。体は自然に深呼吸していたが、マスク越しだと、爽やかさも半減だった▼大型連休は巣ごもり。出掛けたい気持ちを抑えてガイドブックを眺めている。手に入れたばかりの冊子「高遠石工の石仏巡礼ガイド『上伊那南部』編」もその一つ。訪ねた気分になって、風化してなお美しさを増しているという石仏の姿を楽しんでいる▼写真撮影や編集を担当した一般社団法人高遠石工研究センターの熊谷友幸事務局長によると、石仏の表情は光の当たり具合でずいぶん違って見えるらしい。一日のうちでも、季節によっても違うため、何度も現地に足を運び、年月をかけて撮った写真だと聞いた▼昔の人たちは、石仏や石神をよりどころとして大切にしていたのだろう。写真のない当時は家族のモニュメントとしてその面影を石に残そうとしたのかもしれない。今も残る石造物には、疫病や災害などの苦難から乗り越えてきた人たちがいて、その思いを刻んだ石工たちがいた証のようなものがある気がする▼冊子を見ると、石仏が風景の一部になっているのが分かる。熊谷さんによると、風に揺らぐ木々の葉がつくる光と影で、雰囲気を変えていく石仏もあるという。コロナ禍を乗り切ったら訪ねてみようと思う。

おすすめ情報

PAGE TOP