「介護崩壊」募る不安 林医師が緊急提言

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感染対策に取り組む介護スタッフ。感染のリスクと介護崩壊の不安を常に抱えている=茅野市宮川のアイリス茅野

新型コロナウイルスの感染が拡大する中、有料老人ホームなどの高齢者入居施設でマスクや消毒液といった物資の不足や、施設内感染で職員が減りサービスが提供できなくなる「介護崩壊」への不安が募っていることが、往診クリニックちの(茅野市)の林直樹医師が実施したアンケート調査で分かった。林医師は「介護崩壊は直ちに医療崩壊を引き起こす」とし、介護現場への物的、人的な支援の早期実施を求めている。

往診クリニックちのは在宅医療を中心に手掛ける診療所。高齢者入居施設の現状と課題を把握しようと、茅野市内の有料老人ホームや認知症グループホーム、サービス付き高齢者向け住宅など15施設と、諏訪地域の市外3施設の計18施設にアンケートを発送し、14施設から回答を得た。

それによると、全施設が面会禁止や外部人材の出入り制限を行っている。検温といった体調確認は1日2回以上が2施設、同1回が9施設、「全員に毎日はできていない」が3施設。入居者や職員の手洗い、手指消毒が徹底され、発熱時に入居者を隔離して医療機関などに連絡する手順も明確になっていた。

一方、すでに不足または1~2カ月以内になくなる物資は、マスク8施設、消毒用アルコール7施設、使い捨てエプロン4施設、手袋2施設など。医師や保健師、看護師による相談・助言が「必要」だと考えている施設は11施設に上る。施設内でのPCR検査を望む声もあった。

感染者や濃厚接触者が出た場合への備えでは、「緊急出動できる有志を募った」「法人全体で別施設から融通したい」「担当者以外でもケアができるよう利用者情報シートを作った」とする一方、「出勤可能な職員を総動員するしかない」「人数に余裕がない」と訴える声も多い。職員に対する偏見や差別を恐れている施設もあった。

介護職やボランティアの「人材バンク」を設立する林医師の私案に理解を示しながらも、「コロナ以前から人材不足だった。無償のボランティアを集めるのは難しい」「感染リスクがある職場には戻らない」「高い報酬が必要」との見方が大勢を占めた。ある施設は「緊急事態に確実に機能するチームを作る必要がある」とした。

特別養護老人ホーム「アイリス茅野」(茅野市)の五味文子副施設長は「新顔の職員になじめない利用者さんもいる。家族にうつさないためにも、感染が出たら家には帰らない覚悟です」と語り、医療・介護従事者向け住宅の確保など安心して働ける環境整備を求めた。タブレット端末を使った面会や人材の確保、職員が休んだ時の補償、物品購入などの対策には「お金がかかる」とも打ち明けた。

林医師(56)は「介護従事者は医療従事者と同様にこれまでにない重圧を感じながら働いている。疲へいしている介護職に最大限の支援を」と語り、▽医療職による適切な感染対策の助言・指導▽マスクや消毒液などの物品支給▽困った施設に人材を派遣する仕組み作り―の3点を提言した。公的なマンパワーの投入も含めて公民協働で難局を乗り越える重要性を訴えた。

諏訪広域連合介護保険課によると、圏域内の事業所では感染者の発生や施設の閉鎖はないが、危機感は募っている。「事業者と6市町村の共通理解をつくるのが広域連合の役割」と語り、市町村の理解を得ないと職員の派遣は難しいと指摘。「まずは事業者間でマンパワーが融通できるか研究したい」と述べた。

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