2020年5月8日付

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児童文学者、吉野源三郎の「君たちはどう生きるか」の中の一節が、コロナ禍の影響を受けるこの時期に、なぜか思い出された。〈ただ一度の経験、感動の中に、その時だけにとどまらない意味があり、それが本当の君の思想になる〉▼思い出したといっても読んだのはつい最近のこと。漫画がベストセラーになったことで関心が向いた原作を、今年になってようやく手にした。スポーツ大会の中止を伝える報道を聞きながら、記憶にかすかに残っていた先の一節が頭に浮かび、もう一度読み直した▼部活動に励む中学、高校生にとって、練習の成果を発揮する大会の中止はつらく、切なかろう。長野県高体連は県高校総体と各地区総体の中止を決めた。全国高校総体(インターハイ)の中止も踏まえての判断だという。高体連としても苦渋の決断であっただろう▼全国での相次ぐ大会中止にアスリートがメッセージを送っている。自身のブログに「中高生へ」と題したコメントを載せたのはバドミントン女子の奥原希望さん(大町市出身)。「この経験があったから今があると思える日が来ることを願っています」とつづった▼引退する3年生の心中を察すると胸が痛むが、部活動で得られた体験と感動の中に〈その時だけにとどまらない意味があった〉と思える日がきっと訪れるだろう。「この経験があったからこそ今がある」と、自信を持って言える日が。

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