2020年05月13日付

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花粉症を患って10年。春は3種類の薬とマスクが欠かせず、症状がひどい夜は目のかゆみと鼻水に悩まされて眠れない。天敵は鬼気迫る職場の上司ではなく、野辺の草木が放つ小さな粒だという人も多かろう。しかし、今年は事情が違う▼スギ花粉の飛散量が例年比3割、地域によって2割との観測値が出た。「花粉少ないね」が患者同士のあいさつ言葉に。実感として鼻から脳へ酸素が行き渡り、思考もすっきりした。花粉のせいにしていた遅筆は改善されず、ただの悪癖と証明されたのは何とも皮肉だ▼患者にとっては歓喜の春となるはずだったが、そうもいかない。新型コロナウイルスの感染拡大で慢性的なマスク不足が続く。店頭で、花粉症なので売ってほしい―と喉まで声が出た人もいたはず。通常の飛散量ならば、混乱に拍車が掛かっただろうことは容易に想像がつく▼社会課題を譲り合いの美徳へ転じる活動もある。辰野町が余剰マスクの提供者と希望者を仲介する事業は、約2週間で再利用可能な366枚が集まり、贈り主の善意とともに発送されている。コロナ禍の深刻さを裏付けた騒動は半面、人のつながりや互助の尊さを考える種にもなった▼花粉症患者の経験則だと、気温が上がると欲しくなるのが「涼しいマスク」。感染防止力を備えた上で、通気性が良く快適な品を求めるのは難題か。命を守ることを大前提に、一考の余地ありだ。

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