2020年05月25日付

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「若鮎の瀬に尻まくる子供かな」。江戸末期以降を伊那谷で過ごした俳人井上井月が天竜川を眺めて詠んだ。当時稚アユは春になると静岡の海から河口を遡り、約200キロメートル上流の諏訪湖へ入ったとされる。1900年代に天竜川へダムができると遡上が途絶え、以後は地元の漁協が稚アユを放流する▼今春は諏訪東部漁協が400キロ、天竜川漁協が2.5トン、下伊那漁協が5.1トンを放す。下伊那漁協の支部長として放流を担い、今年もまた、ため息が出た。川の水の白い濁りだ。そんな川へ魚を放つのは忍びない▼白濁は支流域で起きた土砂崩落などにより、雨が降ると粘土質の土の粒子が水に混ざって流れることが原因の大部分を占める。2008年から上伊那以南の天竜川で顕著になり、一度雨が降ると濁りが長引く▼下伊那漁協管内の天竜川のアユは白濁以前、秋になると体長30センチを超え、その強烈な釣り味は全国の太公望を魅了した。しかし、白濁で餌となる川の石の表面に生える藻が光合成をできずに成長しなくなると、アユも前のようには育てなくなった。同漁協は全国からの釣り師の減少で、釣りに必要な遊漁券の売上金が白濁前に比べて年間4000万円以上も減った▼現在、崩落現場では土砂の流出を防ぐ治山工事が続く。さらに国や県の白濁対策が進み、大アユばかりか、本流の大アマゴも再び釣れる川になることを心から祈りたい。

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