2020年05月27日付

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絵本って、子どものころに卒業するんじゃなかったか。7年前、浅はかな概念を覆す一冊に出会った。「りんごかもしれない」。人気作家ヨシタケシンスケ氏の出世作だ。家族の心をつかみ、自宅の本棚中央に主役然と定位置を確保した▼男の子が机に置かれたリンゴを見て、実は違う物かも?とイメージを膨らませる。「◯◯かもしれない」の慣用句に合わせ、無限に広がる想像世界。一つのリンゴでここまで展開できるかと感嘆したり、腹を抱えて笑ったり。息子に読み聞かせるはずが、親の方が夢中になった▼ヨシタケ氏が最近テレビ取材で「大人も楽しめるよう描いている」と話した。仕事や家事に追われつつ、子どもに何か読んでやらねばと義務感にさいなまれる親もいるだろう。力まずに本と向き合い、家族の時間を笑顔で満たして―と。わが家の光景は、彼の思惑通りに描かれた。脱帽である▼絵本に限らず小説、図鑑など、誰しもに好きな作家や印象深い作品があるのでは。本は言葉と知識をもたらし、想像力、思いやりを養う。まさに人生の栄養である。心に余裕がない時こそ、本に親しんだ幸福な記憶をたどりたい▼新型コロナウイルス感染防止のために休館していた、地域の公立図書館が再開されている。入館者数や滞在時間に制限はあるものの、本の虫にとっては少し遅い春の到来だ。適切な予防策をとって、すてきな出会いを楽しもう。

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