2020年6月2日付

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「花が少なくて残念だけど仕方ないね」。ツツジの名所として知られる岡谷市の鶴峯公園。新型コロナウイルス感染拡大防止のための閉鎖が解除された5月下旬、中信地方から訪れた来園者は見頃を終えた園内を眺め、肩を落としていた▼外出自粛が叫ばれる中、本来なら多くの人でにぎわう花の名所では例年と異なる春を迎えたことだろう。花を売りにした祭りやイベントも相次いで中止に。花見の自粛を求める動きが全国に広がり、花は咲けども人のいない不思議な景色が量産された▼春は花の話題が新聞紙面をにぎわす時期だが、今年は誘客を促すような報道も自粛傾向。何となく後ろめたい思いで花の取材に臨んだ。人けのない場所でも美しく咲き誇る花々。どんな時代でも春は必ずやってくる。そんなことを考えながらシャッターを切った▼文豪の武者小路実篤は画讃に「人見るもよし 人見ざるもよし 我は咲くなり」との言葉を残している。人が見ていようといまいと自分の花を咲かせる。世間の評価に振り回されることなく精いっぱい生きることの大切さを説いているのだろう▼花に人生を重ねるなら命ある限り自分らしく生き、美しく咲きたいもの。ただ心無い言葉で人を死に追い込む痛ましいニュースを見るに付け、殺伐とした世に生きにくさを感じる。いつの時代も変わらず咲く花々。そんなたくましさが求められているのかもしれない。

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