2020年6月17日付

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家族しかいないはずのわが家に響く大人数の笑い声。そういえばオンライン飲み会があると聞かされていた。本当に楽しいのか半信半疑だっただけに、予想以上の盛り上がりに虚を突かれた格好だ▼コロナ禍の影響で社会的距離という概念が浸透した。公衆衛生上、人と人との距離を保つという意味で用いられるが、人のつながりを妨げるものではない。物理的な距離を縮められないご時世だからこそ、オンライン上での心の交流が重要性を増しているのだろう▼岡谷市の介護老人福祉施設では感染防止に配慮して入所者との直接面会を禁止する中、オンラインの面会システムを導入。画面越しとはいえ、家族の温かいまなざしが入所者を元気付けていると聞く。言い古された言葉だが「人は一人では生きていけない」と実感する▼フランスの哲学者ジャン=ポール・サルトルは戯曲「出口なし」で「地獄とは他人のことだ」と記している。舞台は互いを見つめ、見られ続ける状況を強いられた死後の世界。人は他者のまなざしなしに存在できないが、見られる苦痛からも逃れられないことを3人の男女の密室劇で表現している▼ネットを通じた誹謗中傷で人が命を落とすような世知辛い時代。それでもネットを活用せざるを得ない現代社会。物理的な人の距離ばかりが注目されがちだが、人とのつながりや心の距離についても考える必要があるかもしれない。

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