2020年6月22日付

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上方落語の古典に「池田の猪買い」という話がある。体が冷えて困っている男が、イノシシの肉を食べると良いと教えられて新鮮な肉を手に入れようとして、とんちんかんな言動を繰り返す▼今月12日、伊那市と宮田村でそれぞれ捕獲された野生イノシシ2頭がCSF(豚熱)に感染していたことが発表された。新型コロナウイルス感染症の話題にばかり目が向いてしまい、昨年はあれほど騒がれたCSFのことも忘れがちだが、実はいまだに感染は収まらず、今年の県内では60頭の感染が確認されている▼「池田の猪買い」の後半では、街で売っているような肉では駄目で新しい肉でなければ冷えに効果がないというので、男が猟師に捕獲を依頼する。狩猟に出かけた男と猟師は首尾よく雄雌2頭で連れ立ったイノシシを発見し、鉄砲を撃つと見事に1頭が倒れる▼「新しい肉」で頭がいっぱいの男は倒れたイノシシを見て「これは新しいか」と、やはりとんちんかんな質問をする。あきれた猟師が銃の台尻でイノシシをつつくと、弾がかすって衝撃で気絶していただけのイノシシは息を吹き返して逃げてしまう。猟師は「この通り新しい」▼これは散りばめられた数々のくすぐりを楽しむ話であって、教訓を受け取らなければいけないものではないのだが、新しさにばかり目が向いてしまって、結局何も手に入れられない皮肉な結末には感じるところがある。

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