2020年6月24日付

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「山を守っていく」。諏訪市の霧ケ峰下で国内最大級のメガソーラーの建設を計画していた東京の会社が撤退を表明した夜、報道陣を前に語った地権者の言葉が頭から離れない▼計画地は上桑原牧野農業協同組合、霧ケ峰上桑原共有地組合、上桑原山林組合が保有する。組合員は約200人。高齢化が進む中、売却益の一部を活用し、残る山林の整備を進める予定だった▼茅野市のある財産区の境界確認に同行させてもらったことがある。〈つか回り〉や〈境界改め〉とも呼ばれ、年1回、八ケ岳の稜線まで続く境界を歩いて数十本の杭を打ち込む。高島藩の新田開発で開村した際、山の分割があり、農業や生活に必要な草や落ち葉、木材、まきの採取が許された。かつては境界争いもあったという。境界確認は権利を主張する役務として400年近く連綿と受け継がれてきた▼山と生きることを宿命付けられた人たちは、若い頃から村のために働き、人や仕組みを知り、認められて第一線に立つ。メガソーラーの計画反対の声が大きくなる中で地権者はほぼ沈黙を貫いた。結果的に深刻な対立を回避する一因になったと思う▼多くの財産区や牧野農協は山から収益が得られず、森林整備の資金も不足している。「山を守っていく」。地権者の先祖への誓いであり、子孫への約束だ。現代の人間や地域社会に突き付けられた課題そのものと言ってもよいだろう。

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