協力隊は今 活動中断の協力隊員(下)

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現在、協力隊の活動に興味を持つ中学生とのオンライン交流に取り組んでいる野崎榛香さん(右)。6月23日に1回目の交流会があり、他の国内待機中の協力隊員と共に参加した=駒ケ根市内の協力隊訓練所

「新型コロナウイルスの影響で帰国させられるかもしれない」-。この春、国際協力機構(JICA)の青年海外協力隊員の間でそんなうわさが飛び交っていた。

「いやいや、まさか」。協力隊員の一人、野崎榛香さん(28)=駒ケ根市出身=も耳にしたものの、さほど真に受けることはなかった。当時、教師として活動中だった太平洋の島国ミクロネシア連邦は、感染者が確認されていない「コロナのコの字もない国」。実感が湧かなかったのだ。

だが、うわさはほどなく現実のものとなる。

ミクロネシアに到着してからちょうど8カ月がたった3月17日の昼。野崎さんのもとにJICAから一本の電話が入った。

「今夜の飛行機に乗ってください」

帰国指示だった。

滞在地であるヤップ島の学校は休みに入っていたが、関係者たちに事情を伝えようと島内を走った。「また会えるよね」。同僚の言葉が重く響いた。

時間がなかったためほとんどの荷物をホームステイ先に残し、慌てて空港へと向かった。「すぐに戻ってこられる」。そう思いながら島を離れた。

この頃に前後して、日本、そして世界の多くの国々で、感染者の流入を防ぐために国境を越えた人の移動を制限する動きが相次いだ。外務省によると、6月29日午前6時現在、日本からの渡航者や日本人に対して入国制限措置を取っている国・地域は176。その中には、原則として入国を拒否するミクロネシアも含まれている。

「こんなことになるとは。子どもたちにさよならを言えずに帰ってきてしまった」。野崎さんは唇をかむ。

帰国中の協力隊員によっては、ICT(情報通信技術)を活用し、任国滞在中と同様の活動を続けようと試行錯誤を重ねる者もいる。ただ、ミクロネシアではインターネット環境の整備が日本と比べて進んでいない。野崎さんにできることは限られているのが実情だ。

新型コロナの地球規模のまん延は今もなお、とどまるところを知らない。米ジョンズ・ホプキンス大の集計によると、日本時間6月28日、世界全体の感染者数は1千万人に達した。とりわけ、協力隊の主舞台である中南米や南アジアなどの途上国で、感染拡大が深刻さを増している。JICAは7月、国内で待機中の協力隊員約2千人に協力隊活動の今後の見通しを伝える予定だが、早期の派遣再開は厳しいもようだ。

野崎さんの任期は来年3月に切れる。それまでにミクロネシアの地を再び踏めるのか、現時点で予見するのは難しい。野崎さんは「入国後に隔離されてもいいから戻りたい」。そして、絞り出すように言葉を継いだ。「希望を、捨てたくない」

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