2020年7月4日付

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恋人同士には独特の価値観や約束事があり、その関係性に周囲が首をかしげることもある。2人には当然のことが周りには通じない。本との関係も交際と同じように〈特殊に個人的である〉と、小説家の角田光代さんが著書に書いている▼もし、この本と出合えなかったら―。読書中、角田さんはよく考えるという。世界は何も変わらないだろうが、〈私の見る世界には一色足りないまんまだろう〉(「私たちには物語がある」小学館)と。どんな本を選び、どう読むか、本との関係性は人それぞれだ▼活字離れが言われて久しいが、本のデジタル化で読むという行為自体変化している。読書はもっぱらスマートフォンやタブレットでという人もいる。出版業界の調査研究機関によると、紙の出版市場は縮小が続く一方、電子出版は読者の裾野が拡大しているという▼紙の本の退潮は個人的には寂しい限りだが、最近目に留まったニュースがある。出版取次大手の日本出版販売が、5月は紙の本の売り上げが大きく伸びたと発表した。支えているのは人気コミックだが、自粛生活の中で、改めて本と向き合い始めた人もいるという▼自分にぴったりの本を見つけたいが、その思い込みこそが読書から遠ざかる原因だと、読書の達人、松岡正剛さんは指摘する。本選びに極意なし。恋人の選択と似て「気がついたら好きになっていた」というのがせいぜいであると。

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