2020年7月5日付

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茅野市高部の木の上に建つ茶室「高過庵」。床までの高さは約6メートルあり、はしごで登る。以前、茶室に入る体験をさせていただいたが、ぐらぐらと揺れて、ちょっとしたスリルを味わった▼設計を手掛けた高部出身の建築家で東大名誉教授の藤森照信さんいわく、茶室が欲しくて造ったが、あまりに高くなり高過庵になった-。独創的な茶室を外から眺めると、自分の中ではあるものと重なってくる。ヨシやオギの茎の上に作られるカヤネズミの巣である▼体重7グラムほどの日本一小さなネズミは「空中の建築家」と呼ばれる。交尾後に雌が複数の葉を絡め、葉や穂をこつこつと運搬し、見事な球形の巣を作り上げる。穂綿を敷き、ほかほかにして子育てする▼元茅野市教育長で、日本哺乳類学会員だった故・両角源美さんから聞いた話を思い出している。諏訪湖に注ぐ上川の河川敷に生息する。愛らしい姿をとらえた写真も見せていただいた。高い場所に巣を構えるのは、ヘビなどの天敵から子を守るためだ。赤ちゃんの体重は1円玉ほどという▼全国的に生息域が減り、県も絶滅危惧Ⅱ類に指定する。高さの話に戻せば、上川河川敷は最も高地にある生息地の一つ。寒さは苦手だが、このヨシ原を気に入って命の営みを続けている。「長野県にとって貴重な種、貴重な生息地。環境を残していってほしい」。前回の子年、ノートに書き留めた両角さんの願いだ。

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