2020年7月9日付

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取材現場ではよく、住民のパワーが発露する場面に立ち会える。地域振興イべントや社会奉仕など形は多様だが、最近は防災活動で顕著に表れている。自分と家族の命を守るという唯一無二の目的意識が、人々を突き動かすのだと思う▼南信地域には平成18年7月豪雨の記憶が残る。河川氾濫や土砂崩落が相次ぎ、岡谷市で8人、辰野町で4人が犠牲になった。尊い命が失われた災害は、社会全体で防災における行政頼みの姿勢を改め、住民の主体性を促すきっかけをつくった▼辰野町が各区展開する住民参加型防災マップ作りは、7月豪雨を教訓に実施。航測データで抽出した山崩れの危険箇所を住民が踏査し、情報を図上へ落とし込む。積極的な議論の末、土砂流路や避難ルートを網羅した高精度マップが完成する。県モデル事業を経て学会の研究題材にもなった▼監修者の元信大農学部教授・山寺喜成さんは「住民がすすんで学び、防災の知識と対処法を自己のものとすることに意義がある。安全なまちづくりの一つの答え」と言い切る。マップを手に避難訓練を行う住民たちの表情は、命を守る決意に満ちていた▼梅雨らしいと呼ぶには度を超えた大雨が続く。ハザードマップで居住地周りの災害リスクを確認し、備蓄品を確認しておきたい。状況によってはためらわず避難を。住民パワーは一人ずつができることを考え、実践するところから生まれる。

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