2020年7月10日付

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作品を見た瞬間に、描いた人が想像できる絵画。こんもりした里山と麓の集落、かやぶき屋根の家屋や棚田。失われていく田園風景。独自の視点で対象を見詰め、数多くの作品を残した▼93歳で先日亡くなった茅野市の洋画家篠原昭登さんは八ケ岳山麓の風景を好んで描いた。相当前の話だが、篠原さんが絵画グループを指導する様子を取材したことがある。人まねを嫌い、個性を大切にしていたことが印象に残る▼絵画グループで指導を受けた男性は、「山を支える大地をしっかり描けば、山はしっかり座る」と助言されたという。山の重量を意識して描く-。なかなか気付かない指摘だと感じた▼里山に興味を持ったのは仕事場を東京から茅野に移した50代後半からという。「大好きだった萱ぶき屋根が消え、山裾の美しい棚田も圃場整理で切り餅状になるなかで私の視線が里山に向いたのも当然のなりゆきだったかもしれない。ともあれ、現在私の一番好きな主題は里山の顔つき、楽しさである」。絵画グループの会報誌で振り返っている▼茅野市美術館で6日まで開かれた常設展では篠原さんの絵が数点並んだ。そのうちの一つ「西野川河岸段丘」は70代半ばで描いた大作。埼玉の男性は自身の年齢に近い頃の作品と知り、「すごい力強さ。勇気をもらえた」。篠原さんの作品はこれからも多くの人にさまざまな感動や感慨を与え続けるのだと思った。

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