いつもと異なる様相 諏訪湖ワカサギ大量死から1週間

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諏訪湖中心部溶存酸素量と透明度の推移

諏訪湖中心部溶存酸素量と透明度の推移

湖内の酸素不足が原因とみられる諏訪湖のワカサギ大量死問題は、発生から1週間を迎えようとしている。夏場に起きる湖底貧酸素は湖の近年の課題だが、大量死が起きた頃やその直後に限り、湖底ばかりでなく湖面近くまで低酸素水が広がったり、透明度が急激に向上したりと「いつもと異なる様相」(県機関)を見せたことが判明。原因究明に向けた調査が進行中だ。秋冬に釣り客を呼ぶ観光資源でもあり、魚の残存量も今後の焦点になる。

高温期は、酸素を含んだ湖面付近の水が温められ、酸素が乏しい湖底付近との水温差が拡大。有酸素水と貧酸素水が「水と油」のように二層に分かれる。魚の生息には1リットル当たり3ミリグラム以上の酸素量が必要とされるが、湖底部は無酸素状態になることも珍しくない。

諏訪湖漁協の濃度測定データをみると、15日時点では湖底が貧酸素化する「例年の夏通りの悪い姿」だったが、27日時点でこれが一変。同2~3ミリグラム台の水が満遍なく広がっている状況が浮かび、「これでは魚の居場所がない」との声が上がった。県水産試験場諏訪支場の調査では、21日時点で85センチだった湖心の透明度が28日に130センチ、翌29日に220センチとなり、急激に向上していることが見受けられた=図参照。

ただ、7月末には「いつもの夏の姿」に再び戻り、新たな死骸が出たとの情報も入っていない。県の簡易検査では湖水から有害物質は確認されなかった。

「異なる様相」がなぜ起きたのか―。漁協は、気象条件などにより湖底貧酸素の規模が例年より大きかったところで、「風による混ざり合いが起き、上から下まで全体が貧酸素化した」と推察。原村や白樺湖など流域の降水量も平年より少なく、酸素を含んだ河川水の流入が乏しかったことも影響したとみる。

「湖水位の低い状態が続いたことで、上層・中層の有酸素水の容量が例年より少なかったことも考えられる」と藤森貫治組合長。「魚が大量死するような事態がいつ起きても不思議ではなくなった。問題の元凶は湖底貧酸素。湖底に酸素があれば、悪い条件が重なってもこうした最悪の事態にならない」と強調する。

県では、原因調査の中で水の透明度が急激に向上した点にも着目。光合成により酸素供給する植物プランクトンが何らかの原因で減り、湖面付近の酸素量まで低下した可能性もあるとみて、植物プランクトンに特化した調査にも乗り出している。

湖内の環境は急変したとの見方もあるが、大量死前の測定値がなく、7月20日前後が「空白状態」になっていることも事実だ。湖周の遊覧船業者は「海の日(18日)前からフナの死骸が目立っていた」と証言。「前触れだったのではないか」と推察する。

7月30日、ワカサギ釣りのドーム船を保有する諏訪市渋崎の諏訪湖釣舟センター。湖周業者でつくる釣舟組合の副組合長も務める中澤隆志さん(71)は「ワカサギが十分残っていてほしい」と願いを込めた。

関係機関・団体がこれまでに回収したワカサギの死骸は1トンを超えた。湖の底に沈んだり、天竜川から流れ出た死骸も「相当数ある」と諏訪湖漁協。被害の全容はつかめないままだが、少なくともワカサギ年間漁獲量の1割に当たる2トンは失ったと予測する。

諏訪湖のワカサギ釣りシーズンは9月に開幕し、10~12月に盛りを迎える。大量死問題は報道やインターネットで広がり、中澤さんは「秋に釣り大会を開く主催者から『大丈夫ですか』と問い合わせもあった」と明かす。資源保護を目的とした自主規制の内容が厳しかった昨季は、「山梨など隣県の湖に客が流れてしまった」。今回の問題による風評被害を最も恐れる。

ワカサギの投網漁はやはり9月から始まる。川魚店で販売される甘露煮などは観光土産としても人気が高い。諏訪湖はワカサギ卵の主要供給地であり、140近くの湖沼が諏訪湖産を頼りにする。漁協関係者の間では来春の採卵事業への不安が早くも膨らむ。

漁協によると、春先には平年並みの6億粒を諏訪湖に放流している。7月23日に行った試し捕りでは、湖全体で満遍なく捕れ、成育状態を含めて「良好な結果」を得た。ベテラン漁師の1人は「今年はいいぞと思っていた矢先だった。ショックが大きい」とうなだれる。

漁協は、週内のうちに試し捕りを複数回実施。23日時点との比較で被害状況を推計するなどし、秋以降の対応を考える方針だ。県水産試験場諏訪支場も魚群探知機調査で資源量を推計。諏訪地方事務所は「溶存酸素量などの監視を強めていく」とする。

詳細な水質検査や植物プランクトン量などの環境関係の調査を含め、8月中には結果がほぼ出そろう見通しで、要因分析や被害推計が本格化する。県は3日に諏訪市内で開く諏訪湖の環境改善にかかわる有識者会議で急きょ、漁協による大量死問題の概要説明を組み込んだ。中山哲徳・水大気環境課長は「貧酸素は課題だったが、初めて魚にまで影響する事態になった。識者の意見も参考にしたい」としている。

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