2016年08月04日付

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諏訪大社の祭神、建御名方命は武勇を好む神として知られる。建御雷神と建御名方神が出雲の国をかけて力くらべをしたという、「古事記」の中に見られる国譲りの神話は有名だ。旧蔵前国技館には諏訪明神がまつってあったというから、力士の信仰も厚かったのだろう▼諏訪市の諏訪大社上社本宮の参集殿入り口には、元横綱千代の富士と貴乃花から寄進された優勝額が掛けられている。千代の富士の額は1989年の七月場所で28回目の優勝を果たしたときのものだ。95年に大社に奉納された▼突然の訃報である。その千代の富士、いまの九重親方が61歳の若さで亡くなった。速報で流れたニュースに一瞬言葉を失った。小兵ながら持ち前の力強さとスピードで幾多の名勝負を繰り広げてきた昭和の大横綱の勇姿を、心の内に改めて思い浮かべた人もいよう▼鋭く踏み込んで前まわしを引き、強烈な引き付けで相手の重心を浮かせて走る。「小兵の相撲に革命を起こした」と時事通信社元運動部編集委員の若林哲治さんが評伝の中で書いている。「強かった。確かに、強かった」。文章を締めた一言は、万人の思いだろう▼大社への優勝額の奉納式で、「諏訪大社に飾ってもらえるのは光栄で、諏訪の地から立派な力士が出るよう願っている」と語った九重親方。大相撲発展のために尽くした親方の業績に敬意を表しながら、心からご冥福をお祈りしたい。

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