2020年8月2日付

LINEで送る
Pocket

ホームセンターで花火の売り場に立ち寄ってみた。わいわい騒ぎながら、庭先で花火をした遠い昔を思い出した。翌朝は決まって、バケツの水に漬かった残りかすに一抹の寂しさを覚えたものだ。〈手花火のその翌朝の庭の屑〉高浜虚子▼「花火の中では線香花火が一番素晴らしい」と言ったのは物理学者の寺田寅彦だ。〈あらゆる火花のエネルギーを吐き尽くした火球は、もろく力なくポトリと落ちる〉。その燃え方には「序破急」があり「起承転結」があり、詩や音楽があると、随筆に記している▼名随筆家でもあったその人は、〈打ち上げ花火はたしかに芸術である〉ともつづっている(随筆「柿の種」)。その言葉を実感する季節ではあるのに、今年の日本の夜は寂しい。花火大会の中止が相次いだ。8月。夏休み。梅雨明け。少しは気分も上がるだろうか▼例年とは趣を異にする夏に、コロナ終息を願う花火が各地で上がる。伝統を守る花火師の心意気でもあるだろう。飯島町では地元煙火店が先月27日、全国6社と連携した「キズナハナビ」に参加し、世の中に希望の光をともそうと数百発を打ち上げ、夜空を彩った▼町は町内の小中学生に線香花火を配り、この日に合わせて「おうち花火」をした家庭もあったという。家族だんらんの光景が浮かぶ言葉である。その幸せをかみしめる夏であろう。人の一生にもにた線香花火は、きっと欠かせない。

おすすめ情報

PAGE TOP