2020年8月14日付

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今春、気まぐれで長野市松代町を訪れた。真田家ゆかりの城跡や武家屋敷、蔵が残る城下町などを散策しつつ、十数年ぶりに松代大本営跡の象山地下壕に立ち寄った▼用意されていたヘルメットを着け、湿気を感じながら公開されている長さ500メートルほどの地下通路を進む。NPO法人松代大本営平和祈念館によると、敗戦色が濃くなる中、本土決戦に備え突貫工事で建設された巨大地下壕。象山地下壕には政府やNHK、中央電話局などが移転を予定したが、大本営であることは伏せ倉庫の建設工事と説明していた▼壁面には岩盤を砕くダイナマイトを詰めるための穴、地面には土砂を運び出すトロッコの枕木跡―。多くの朝鮮半島出身者が動員され、犠牲になった。さまざまな痕跡に当時の情勢や過酷な作業などを想像すると、いつまでこの地下壕を保存できるのかとの疑問も浮かんできた▼旧陸軍伊那飛行場があった伊那市には、飛行機格納庫の基礎部分の遺構が残る。道路整備の計画ルートにかかったが、保存を求める地元の声や市議会の決議などを受け、市教育委員会は2018年、移設を前提としながらも保存を図る方針を固めた▼戦後75年。戦争体験者が徐々に減る中、次世代に戦争を伝える遺構の存在意義はこれから高まっていくだろう。「もの言わぬ証人」を風化させずに受け継いでいくことにも、心を向ける時期に来ているのかもしれない。

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