2020年8月31日付

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〈今年の八月はしんじつ疲れました〉。小説家、故宮尾登美子さんの「帯」と題した随筆は、こんな書き出しで始まる。執筆は1987(昭和62)年。この年は猛暑で首都圏が大停電に見舞われている。暑気あたりでもしたのだろうか▼南国土佐の生まれで暑さには強いという宮尾さんが、〈体中、重りをぶら下げているようで、身心ともに萎え果てた感じ〉とまで書いている。仕事上のトラブルを抱えていたといい、精神的に緊張を強いられたことが、より大きな疲労感につながったと文章は続く▼コロナ禍での慎重な行動が求められた今年の「特別な夏」に思いは至った。長雨にじらされ、関東甲信で梅雨が明けたのは8月の声を聞いてから。そこに待ち構えていたのは猛暑である。感染症に備え、熱中症に備え…。緊張続きの毎日で疲労の蓄積も大きかった▼梅雨が明け、学校でも待ちに待った夏休みが始まった行楽シーズン本番に、長野県内でも新型コロナウイルスの「第2波」到来が懸念され、お盆の帰省を思いとどまった人も少なくなかっただろう。観光客を迎える事業者にとっても、「緊張の夏」であったと思う▼風の音に、虫の声に季節の変わり目を実感する日もあろうが、厳しい残暑は続きそうである。あえぐような暑さと、勝手が違う中での仕事、生活に追われたこの夏を振り返って思うことは一つ。「今年の八月はしんじつ疲れました」

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