2020年9月11日付

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庶民の味として親しまれるサンマが記録的不漁という。8月の水揚げは過去最低だった昨年を下回る水準。漁獲不振による価格高騰で「もはや高級魚」と嘆く声もあり、庶民には高根の花となる懸念もあるようだ▼「食卓から消える」。そんなニュースの見出しに踊らされ、立ち寄ったスーパーでサンマの刺し身を購入した。安価な冷凍物で400円ほど。「そのうちもっと高くなる」という意識から手が伸びたが、もともとサンマ好きというわけではない。ブリやカツオを選ばなかったことを晩酌時に後悔した▼「ない」と言われれば欲しくなるのが消費者心理。自分にとって本当に必要なものか、判断を鈍らすこともある。コロナ禍に起因するトイレットペーパーの買い占めもその一つ。「品薄はデマ」との呼び掛けもむなしく、店舗に行列をつくる消費者の姿は記憶に新しい▼米国の小説家ヘミングウェーは「今はないものについて考えるときではない。今あるもので、何ができるかを考えるときである」と述べている。無い物ねだりで心は満たされない。幸せを考える上で示唆に富んだ言葉だと感じる▼コロナ禍で閉塞感が漂う中、できないことを数えれば切りがない。ただ存外楽しめることもある。鮮魚売り場で例えるなら不漁のサンマに執着するよりも、豊漁のイワシに注目してみる。そんな発想の転換が生活に潤いを与えてくれるかもしれない。

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