協力隊はいま2 国内での活動(中)

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元青年海外協力隊員が仲介し、日本とキルギスの子どもたちが交流したオンラインイベント=8月22日、駒ケ根市内

「サラマッスズブ!」。駒ケ根市内のある建物の一室に集まった子どもたちが、にぎやかな声を響かせた。中央アジア・キルギスの言語で「こんにちは」を意味するあいさつだ。言葉を向けた先にあるのはパソコンやタブレット。画面上にはキルギスの子どもたちの姿が映っていた。

市内を拠点に異文化交流に取り組む団体「つなぐ♡HUB(ハブ)」は8月下旬、日本とキルギスをオンラインで結ぶ国際交流イベントを開いた。約5千キロ離れた両国の子どもたちは、同時通訳を交えて互いの国の風景を見せ合ったり民族舞踊を紹介したり。新鮮な体験に目を輝かせていた。牧野和さん(12)=中川村=は「世界にはいろんな言葉や文化があるのを知れて面白い」と頬を緩める。

両国の橋渡し役を務めたのは、キルギスで活動した経験を持つ元青年海外協力隊員。つなぐ♡HUBは6月から毎月数回、協力隊員(経験者含む)と協力し、オンライン形式の交流イベントを実施している。きっかけは新型コロナウイルスの感染拡大だった。

世界各地の途上国に赴任していた協力隊員は今春、全員が日本に一時帰国した。未知のウイルスが地球規模でまん延する中、任国によっては医療体制が不十分で隊員の安全を確保できない│などと国際協力機構(JICA)が判断したからだ。派遣再開の見通しはいまだに立っていない。

こうした現状の下でつなぐ♡HUBは協力隊員に声を掛けた。「多様な経歴を持つ協力隊員を通じて、子どもたちが世界に目を向けることにつながれば」。オンライン交流の企画を説明すると、約20人が快く参加した。皆が全国各地に散らばっているため、打ち合わせ会や反省会もオンラインで開き、試行錯誤を重ねている。

つなぐ♡HUBの宮澤富士子代表(58)はオンライン交流の特長を「ローコスト・ハイリターン(小さな費用で大きな効果)」と表現する。国内外のさまざまな環境の人たちと移動を伴わずにコミュニケーションが取れ、刺激を受けられるからだ。

世界各国は今、新型コロナ感染者の流入を防ぐため、国境を越えた人の移動を制限している。外務省の発表(18日)によると、日本人や日本からの渡航者の入国・入域を制限している国・地域は115に及ぶ。日本政府も159カ国・地域からの外国人の入国を原則拒否している。

一方、新型コロナは積極的なICT(情報通信技術)活用の気運を醸成した。職場に出勤せず、オンラインで会議などをこなす「リモートワーク(遠隔勤務)」の普及が代表例だ。つなぐ♡HUBと協力隊員が主導するオンライン交流は、そんな時流の延長線上に位置付けられる。コロナ禍が国境に「見えない壁」をつくりながらも、世界への関心を高める新しい機会を生み出した事実が興味深い。

パプアニューギニアの小学校で算数の教育支援を手掛けた元協力隊員で、オンライン交流に携わる髙嶺直己さん(28)=横浜市=は言う。「コロナがあったからこそオンライン交流の場ができた。自分にできることを通じて、子どもたちの成長のチャンスにつなげていきたい」。国が変わっても、次世代への思いは変わらない。

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