2020年11月4日付

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青白い月明かりの下、貫頭衣に竹皮の面を被った人がたき火の煙をまとって舞う。かの時代の人たちもこう祈りを捧げたろうか。5千年前へと思いがめぐる▼晩秋の夜、富士見で縄文をイメージした祭式が行われた。井戸尻の縄文考は一般論とはちょっと違う路線を走っていて、「縄文時代にはすでに農耕をしていた」と独自論を展開している。祭式はそれを基にした行事で井戸尻考古館の職員らが縄文人となり、収穫に感謝し、命を生む女神の土偶を割って翌年の実りを祈る▼例年なら県内外から縄文ファンらが集まってにぎやかな祭りになるが、今年は中止。ただ、「縄文時代にも時勢に関係なく必ず行う祈りがあったはず」と儀式だけは継続にこだわった。その心意気に町内の太鼓チームも応えた▼はだしで楽器を打ち鳴らし、子どもも大人も「ヨイヤハイサー」と口々に叫ぶ。凍えて足はひきつり、ろれつも回らないのに力強く、何かが乗り移ったかのような気迫だった。「縄文人にとって秋の収穫は喜びと同時に、厳しい冬に臨む覚悟を決めるものだったろう」と小松隆史館長。「私たちも苦境に諦めず立ち向かう決意を表した」▼万難を越えて命をつないだ縄文人のたくましさは、今も確かに受け継がれているようだ。先日、下諏訪の「四王藁の会」が御柱祭の綱打ちに向けて動く報があった。「負けるもんか」の心意気に皆の力も湧いてくる。

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