戦争と地震の体験絵本に 木部さん自費出版

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戦争と地震の体験をつづった「の~このおはなし」を自費出版した木部則子さん

伊那市上の原の木部則子さん(84)が、太平洋戦争と東南海地震、三河地震の体験をつづった絵本「の~このおはなし」を自費出版した。戦争と地震という二つの惨禍の中で少女時代を過ごした木部さん。その記憶は今も薄れることなく、鮮明に刻み込まれているという。こうした苦難の歴史の上に今日の日本の繁栄があることを知ってもらい、平和を考えるきっかけにしてほしいと願っている。

木部さんは愛知県安城市出身。父親の仕事の関係で朝鮮(現在の韓国)に一時住んでいたが、父親がまちから遠い地方へ転勤となったことをきっかけに父母らと離れて日本へ帰国。愛知県の祖父の家で暮らすようになった。

絵本は、太平洋戦争中の1943年ごろから45年の終戦前後の思い出を中心につづった。戦況が悪化する中、米軍機が毎日のように飛来。空襲警報が鳴ると防空壕に逃げ込み、防空頭巾をかぶった。食料もなくなり、家の天井が映るぐらい水ばかり入ったおかゆを「天井がゆ」と呼んで食べ、それでも戦争のためだと思い我慢したという。

それに追い打ちをかけるように44年12月に東南海地震、45年1月に三河地震が相次いで発生。家は傾き、道路はひび割れた。冬だったため、食べ物はなく、生活は困窮。米軍機の飛来も続いたが、地震の揺れで防空壕がつぶれる危険があり、恐怖に震えながら通り過ぎるのを待ったと当時の体験を描いている。

もともとは10年ほど前に紙芝居として作ったものを改めてまとめた。当時、父、弟、母を相次いで亡くし、寂しい気持ちを埋めるように幼い頃の思い出を一気に描き上げたという。長年、ガールスカウトの指導者として取り組む中で、戦争を知らない子どもたちに平和の尊さを伝えていこうと、紙芝居にしてキャンプなどで上演してきた。

木部さんは「現代は物があふれ、夢のような時代。地震は避けられないが、戦争は人間同士のことであり、避けられるという思いがあった」とし、「この絵本を後の世の誰かが受け止め、平和について考えるきっかけになればうれしい」と話している。

絵本はA4判で、約20のエピソードがつづられている。140部作製。9日は伊那市役所を訪れ、一部を市に寄贈した。図書館や公民館に置かれるという。

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