2016年08月17日付

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毎年8月になると、新聞やテレビが戦争の話題を取り上げる。マスコミの年中行事、と揶揄もされる。しかし、原爆の日や終戦記念日に合わせて、じっくり戦争や平和について考えるよい機会ではあるだろう▼個人的にも、この時期、しきりに気になることがある。筆者は昭和30年代半ばの生まれ。まだ終戦から15、16年だ。当時の大人たちは戦争の記憶や体験と、どう向き合っていたのだろうか。心や体に傷を負った人。身内を亡くした人。そんな人がいただろう▼この人も戦争を引きずって生きた一人かもしれない。お隣の山梨県右左口村(現甲府市)に生まれた歌人、山崎方代(1914~85年)である。戦争中、高射砲部隊に所属し、南方の戦闘で右目を失明。左目もほとんど見えなくなったという。「弾丸傷にうずく眼玉を掘り出して調べてもらう遺書をのこせり」▼戦後は靴の修理などで生計を立て、各地を転々としていた時期もあった。「放浪の歌人」と言われたが、奇行の人でもあった。孤独と寂しさの中で詠んだ歌には人生の悲哀や滑稽味があり、今でもファンが多いそうだ。「かさかさになりし心の真ん中へどんぐりの実を落してみたり」▼方代はいつも古里の甲州や亡き両親に思いを寄せていた。「ふるさとの右左口郷は骨壺の底にゆられてわがかえる村」。あの戦争がなかったら、この人にも違う人生があっただろうか。19日は方代忌。

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