2020年11月19日付

LINEで送る
Pocket

夜の富士見高原病院。リハビリ室に各所のスタッフが集まってくる。「いよいよ出来ましたね」と顔がほころぶ。車の運転を模擬体験できる手作りのリハビリ支援装置が完成し、披露の時が来た▼「パソコンはオークションで安く手に入れて、座席は僕の車の物なんだ」と整形外科部長。副院長はメスを大工道具に持ち替えて腕を振るった。出来栄えに胸を張る皆の姿は工作好きの子どものようだが、この装置は医療、警察それぞれの現場の苦悩から生まれた▼「先生、退院したらまた運転できますか」。患者に聞かれるたびに困惑する。「その体では無理と内心思っても、運転ができなければ通院はおろか生活が立ちゆかない」。患者に心寄り添うほど言葉に詰まる。警察官も心情的には同じ思いだ▼交通の便に不自由がない地域づくりは各自治体が頭を抱える難題。医師たちは「10年後がさらに心配」という。山麓地域に移り住んだ人の多くが運転困難な年齢に達する。移住者はとかく隣近所とのつながりが薄く、交通不便に陥りがちなのだそう。各行政の盛んな移住誘致に対して「交通手段の整備も併せて取り組まないとますます課題が膨らむ」とも言う▼伊那、茅野ではAIを使った乗合タクシーの試行が始まった。地域住民の安心につながる運用の道筋がみえるといい。もちろん行政頼みばかりでなく、健康維持と交通安全の努力は自身から、だが。

おすすめ情報

PAGE TOP