2020年11月21日付

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「おでん大根だけど、いるけ」。分けてくれた知人はそう言っていたが、食べてみると確かに煮崩れがなくて、味も良く染み込んでいた。料理もできない者が偉そうに…と言われそうだが、「おでん大根」と呼ぶ理由が分かった気がした▼上伊那農業高校では、生徒たちが実習で作った野菜や果物、花などを事務室前に置き、販売している。数量が限られているので、いつも並んでいるわけではないが、先日は「ねずみ大根」が売られていた。販促用の手作りPOPにはかわいらしいネズミの絵を添えて、「そば用薬味」と書かれていた▼「ねずみ大根」は、緻密で硬い肉質のため、産地の埴科郡坂城町辺りでは、漬物やおろし大根、そばの薬味、名物「おしぼりうどん」のつけ汁に使われている。同じ大根でも、おそらくおでんには向かない。その特性を生かした食べ方が、地域の食文化となり、「ねずみ大根」とともに大事に残されている▼伝統野菜と称される特徴ある地方品種は、生産性が悪かったり、個性が強かったり、多くが癖のある野菜だ。だが、おいしい食べ方を知っている人たちがその食べ方とともに、大切に守ってきたからこそ今に伝わっている▼食生活が変わり、好みが変わっていく中で、消え、生まれてくるのも食文化だと思う。いつの日か「おでん大根」なんていう伝統野菜が世に出るかもしれない…なんてことを思いながら味わった。

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