2020年11月26日付

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懐石料理に「箸洗い」という用語がある。一汁三菜の後に出される薄味の吸い物のことで、一通りの食事を済ませた箸の先と口の中を清める意味がある。料理人の辻嘉一さんによると、それは日本料理の中で一番淡い味の吸い物だという▼箸洗いは昆布の薄だしと少量の塩で淡い味に仕立てる。白湯に梅肉で加減をすることもあるという。塩分が美味をつくる。一汁三菜が濃い味であればこそ旨さを感じる不思議な「淡味」だと、エッセー「味覚三昧」で、辻さんは加減の妙について筆を振るっている▼日本料理における塩の使い方は非常に多彩だが、「包丁十年、塩味十年」と言われるように、塩加減は非常に難しい技だという。いわんや素人においてをや、である。人間の血液の塩分濃度(0.9%)がおいしいと感じる塩加減だとも聞くが、塩梅がわからない▼減少傾向とはいえ日本の食塩摂取量は諸外国に比べて高めだという。5年ぶりに改定された厚労省の「日本人の食事摂取基準」では一日に摂取する塩分目標量が男女共さらに0.5グラム引き下げられた。この数値に照らせば塩好きの筆者の体は塩漬け状態に違いない▼塩の主成分のナトリウムは生命活動に欠かせず、必須ミネラルの一つでもあるが、摂りすぎは禁物だから悩ましい。なんでもおいしくする魔法の調味料の塩の呪縛から逃れるためにも、まずは舌の味覚改善が必要なのかもしれない。

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