2016年08月20日付

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終戦記念日のサイレンが響く中、黙とうをささげながら、富士見町の小倉裕子さんが聞かせてくれた話を思い出していた。勤務先の塾で接した男子中学生のこと。彼女はその生徒と日本の先を案じて「怖くなった」という▼とても成績が優秀なので進学は東大かと尋ねたら、「防衛大」と意外な答えが返ってきた。ジェット機のパイロットにでも憧れているのかと聞くと、「参謀になって戦争に勝つんです。日本を守るんです」と冷静な声▼彼女は驚き、戦争の悲惨さや平和の尊さについて言葉を尽くしたが、彼の意志は固かった。「優秀な彼ならきっと夢を実現させる。ニュースからのわずかな知識で他国を悪とみなし、信じて疑わない。純粋な心からだけに怖い」と顔を曇らせた▼近ごろは働き盛りの世代からも「戦争になったら兵士に志願する。死も覚悟だ」との声を聞く。現代は日常の中で、血にまみれて路上に転がるむごたらしい死を目にする機会もそうはない。正義感が先立ち、死とは何か、遺された人の苦痛はいかばかりかと考える意識が薄れているようで危うい▼小倉さんは公民館報へ、前述の中学生に対し「その命を心から守りたいと思う女性が現われ、真の守り方を学んでくれることを願っている」と寄稿した。守り方の定義は人さまざまだが、慰霊碑に手を合わせる遺族たちも、痛恨の思いで同じ願いを込めているのではないだろうか。

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