2020年12月5日付

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「右がちょっと高いかな。もう少し下。そうそう、それぐらいでよさそう」。ホールから聞こえてきたのは、大きな額装の書を飾る人たちの声だった。どうやら作品展の開催準備のようだ▼3~4メートル離れた場所から見ている人が指示を出し、もう一人が作品をつり下げているワイヤの長さを調整していた。位置決めに道具を使っている様子はなかったが、きちんと水平に飾られていたし、隣の作品とも高さがそろっていた。人の目の感覚はすごいと改めて思った▼職人と呼ばれる人たちの仕事には、そういう感覚が生かされているのではないかと感じることがある。「現代の名工」で作庭家の塩原健さん=松本市=が、信州・未来のひとづくり塾事業で高校に派遣されたときのことだ。竹垣の設置を実演した塩原さんは「真っすぐ建てられているかどうかはメケンで分かる」と高校生に教えていた▼「メケン」というのは多分「目見当」のことだろうが、職人の仕事は見当をつけて大体の位置に据え付ける…なんていうレベルではない。頭の中に垂直や水平の基準線みたいなものがあるような感じだった。竹垣を建てた後に、念のため専用の測定具を使って確認していたが、手直しの必要などなかった▼聞けば、視野の中に不動の垂直を見つけるのがこつらしい。展示した額の傾き具合など、少し離れた場所から見た方が分かる理由もそこにあるのかもしれない。

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