2020年12月13日付

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その、通りに面したオープンテラスの古びたレストランは、難民キャンプから約13キロ離れた街の中心部にあった。昼間、数万人がテント生活を送る難民キャンプの取材を終えて街へ戻り、食事をしようと、雇った通訳兼ガイドやタクシー運転手と共に入店した▼ガイドの取材に対する協力的な姿勢に気を良くし、「何でも好きなものを食べて」と言った。2人は肉や魚料理とパンを頼み、みんなで料理の8割を食べたころ、その少女はレストランの床下から現れた▼彼女の年齢は7~8歳か。笑顔を浮かべて左手で腹部を押さえ、右手を口に運んだ。「お腹がすいている」。言葉は無くても仕草で分かった。さらに一歩踏み出した彼女をガイドは制したが「かまわない」と言って少女を近寄せ、両方を合わせても小さな面積の手のひらに料理を載せた▼食べると思った。だが少女は後ろを振り向き、声を発した。それを合図に床下から数人の、より幼い子どもが現れ、彼女は手の上の料理を仲間に分けた。ガイドによると、戦禍を逃れて来たものの、途中で親を亡くした孤児だった。内戦の実態。少女らの明日を案じても答えはなかった。その夜だけでもお腹をいっぱいにして寝てほしくて料理を追加した▼国連によると、昨年の支援難民は約8650万人。一方コロナ禍の影響で今後、途上国などでは約2億7000万人分の食料が不足すると試算している。

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