2020年12月15日付

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さまざまな公共施設の中でも「野外音楽堂」は目立たない存在だ。森の中や湖のほとり、芝生に囲まれた丘の上などにあり、自然に溶け込むようにたたずむ。音響や照明、空調設備が整った音楽ホールに比べたら、見劣りすると感じる方もいるかもしれない▼今年はそんな野外音楽堂にたくさんの歌声が響いた。有名な歌手がコンサートを開いたわけではない。地域の合唱団などが新型コロナウイルスの感染予防対策で「3密」(密閉・密集・密接)を避けた結果、最適な活動拠点になったのだ▼茅野市の女声コーラスグループ「コール・フェミニーレ」は5月、運動公園内にある野外音楽堂で練習を始めた。最初は4、5人だったが、7月には20人にまで増えたという▼創立30周年を迎えたグループは70~80代が中心で、デイサービスに通いながら歌い続ける人もいる。ある会員は認知機能が低下し、かばんにしまった楽譜を忘れてしまうが、譜面を読めば若いころより上手に歌うことができる。中心メンバーの原房子さん(71)は「歌うことは思いの表現。仲間と支え合えば歌い続けることができる。野外音楽堂に救われた人は多いはず」と話す▼東京の日比谷公園大音楽堂や米タングルウッドにある壁のない屋根付きの演奏会場など、野外音楽堂にはそこで繰り広げる「コト」にこそ魅力がある。「モノ」の価値は使う人によって決まるということか。

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