2020年12月25日付

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旧ユーゴスラビア崩壊後、内戦状態が長く続いたコソボでベートーベンの交響曲第9番が演奏されたのは2019年6月。コソボ・フィルハーモニー交響楽団を率いて公演を成し遂げたのは、下諏訪町出身の指揮者、柳澤寿男さんだ▼若き日に欧州に渡り、指揮者としての経験を積んだ柳澤さんは、民族共栄のための「バルカン室内管弦楽団」を2007年に設立した。紛争でアルバニア人とセルビア人の対立が激化するなか、コソボの地で、両民族合同の楽団によるコンサートも実現させている▼柳澤さんが本紙統合版に連載しているエッセーで、史上初となるコソボでの「第九」公演の様子を知ることができた。会場となった首都プリシュティナの広場脇の建物はかつてNATOの爆撃もあった場所。歓喜する聴衆の姿に「胸が熱くなった」と述懐している▼ドイツの偉大な作曲家ベートーベンは1770年12月の生まれで、今年は生誕250年のメモリアルイヤー。コロナ禍でなければ、楽聖の軌跡を振り返るイベントが各地で盛大に行われたであろう。苦難の時だからだろうか。柳澤さんの体験談がふと思い出された▼平和と協調の象徴である第九が生む連帯感が必要だ。今にも通じるメッセージとして柳澤さんの文章を読んだ。「抱き合おう、何百万の人々よ」。コロナ禍で第九で歌われる理想のようにはいかないが、その日が早く訪れることを願う。

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