2021年1月9日付

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過去2千年間で最も重要な発明は何か―。各界の有識者に聞いてまとめた本の中で、アメリカのメディア評論家、ダグラス・ラシュコフ氏は、「消しゴム」と答えている。出版は2000年1月1日。千年紀の節目にちなむ企画だという▼消しゴムは一つの象徴で、ダグラス氏はコンピューターのデリート・キー、合衆国憲法の修正箇条、文書の修正液など、〈われわれが犯す誤りを訂正できるしくみ〉全般を挙げている(「2000年間で最大の発明は何か」ジョン・ブロックマン編/高橋健次訳)▼人間である以上、どんなに慎重かつ正確を期して行動しても、失敗することもあれば過ちを犯すこともある。〈日々を過ごす/日々を過つ/二つは/一つことか〉。吉野弘さんの「過」という詩を慰みに生きる者としては、何でも帳消しにできる消しゴムがほしい▼見えない敵との攻防が続いた日々を消し去ることができたなら。旧年を振り返り、そんな愚にもつかない思いにとらわれる。大会や催しの中止や延期が相次ぎ、大学生はキャンパスに通えず…。今しかできない機会を奪われ、どれほどの量の涙が流れたことだろう▼災禍は依然としてそこにあり、制御しにくい難敵との抜き差しならない状況は当面続きそうである。災いを消しゴムで消し去ることはできないが、感染拡大につながる行動を修正することはできる。明るい未来を描ける年にしたい。

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