2016年08月25日付

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伊那市長谷の浦地区では、在来種のソバが満開の花を咲かせている。絶滅寸前だった種の復活に取り組んでいるのは同市の「信州そば発祥の地伊那そば振興会」。会員らは出来上がってくるそばがどんな香りで、どんな味なのかを楽しみにしていることだろう▼塩尻市の県野菜花き試験場に「高遠入野谷『浦』」と記載されて残っていたソバの種はわずか20グラムだったそうだ。自給自足が当たり前だった頃、地域の作物は人々の暮らしとともにあった。そこで食の文化がつくられてきたとすれば、ほんのひとつかみ残っていた種は文化財といえるのかもしれない▼同所在来の種は現在一般的に栽培されているソバの種よりも小粒だった。実が小さければ製粉したときにそば粉にすることができる量は劣り、より生産性の高い改良品種に切り替わっていったことは想像できる▼ただ、昔の人たちが大切に種を守り残してきた魅力がどこかにあったはずだ。1作目の今年の楽しみは、そうした品種特性を見い出すことにある。浦地区の人たちから、種まきの時期や栽培方法などの聞き取り調査を行い、在来種に合った作付けも研究してきた▼今のところ県の試験場で増やした種の一部を使った試験的な栽培だが、木々に囲まれた場所にある畑は、よみがえった大事な品種の交雑を防ぐにはちょうどよさそう。在来種が見直され、地域の資源として活用されていけばいい。

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