2020年1月23日付

LINEで送る
Pocket

ネット空間を無数に飛び交う、発信者の顔の見えない言葉が頭に浮かんだ。〈送信者は不思議なほど目立たぬ存在で、顔もなく、色もないだろう…〉。米国の小説家ウィリアム・バロウズの「裸のランチ」(河出書房新社)の一節である▼バロウズは1950年代の米国で起こった新たな文学運動を担った「ビートニク世代」の代表格。ネットなどない時代だが、現代を予言するような同書の記述に目が留まった。〈送信者はウィルスと同じように自分の行き先をいつも知っている〉(鮎川信夫訳)と▼コロナ禍で、「インフォメーション(情報)」と感染症の広がりを意味する「エピデミック」を組み合わせた「インフォデミック」という造語が知られるようになった。情報の拡散、特に根拠のない情報の大量拡散を指す。流布する速さはまさにウイルスのようだ▼インフォデミックによって信頼性の高い情報が見つけにくくなっていると世界保健機関(WHO)も警告している。インターネット上のたわいないつぶやきもツイート、リツイートされ、限りなく拡散する。情報を発する側も、受け取る側も用心が必要だが難しい▼新型コロナに伴う誹謗中傷を抑止するため、県は「ココロのワクチンプロジェクト」を始め、特設サイトを設けた。ウイルスや流言飛語だけでなく、笑顔や思いやりの心もまた伝染するものだろう。病原体の前では全て相身互いだ。

おすすめ情報

PAGE TOP