御柱祭へ「おんべ職人」始動 茅野の長田さん

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体で覚えた感覚で一心にかんなを引く長田さん。妻せつ子さんと二人三脚のおんべ作りが始まった

諏訪地方の名だたる「おんべ職人」4人に学び、前回2016(平成28)年の諏訪大社御柱祭で”職人デビュー”した茅野市豊平下古田の大工、長田並喜さん(70)が次回22(令和4)年の御柱祭に向けて動き始めた。おんべの房をつくる1枚1枚の厚みは0.048~0.05ミリ。付け焼き刃ではできない仕事だ。早めの始動は、伝統を受け継いでくれる後継者を育てたい思いがあるからだ。

長田さんは仕事柄、おんべ作りに興味があったが、周りから「難しい」と聞かされ行動に移せずいた。15年10月、御柱祭の伝統を受け継ぐ人々を取り上げた長野日報の特集記事「つなぐ御柱」を見て心を決めた。紹介されたのは、氏子としても奉仕し40年にわたっておんべを作り続けた大工の石井粂男さん(故人)=諏訪市=だった。「後を継ぐ衆を育てたい。作り方を覚えたい人には教える。祭りを守って」と語る80歳近い職人の言葉に背中を押された。

思い切って石井さんを訪ねると「取りあえずやってみろ」と心強い言葉をもらい、本業は二の次で取り組んだ。その頃から石井さんは体調を崩すようになったが、知識と技術を惜しみなく分け与えてくれた。岡谷市の山本卯之助さん、茅野市の広瀬勝也さん、諏訪市の矢崎毅さんからもそれぞれの極意を学んだ。

おんべ作りの命といえるかんなは中古を改良し55丁をそろえるも、最初に石井さんからもらったミカンの木を台にした1丁に勝るものは無いという。使用するトウヒの角材の表面を吸い付くように滑り、かんなくずは透明感のある”白いリボン”となって現れる。その端を妻せつ子さんが持ち、丸まらないよう、ちぎれないよう、あうんの呼吸で補助する。

前回の御柱祭では、試行錯誤しながらも3万枚を引いた。かんなの刃の角度や出し具合の調整はもちろん、研ぎの重要性を改めて実感。壁にぶち当たり、悩み抜いた末に東京などの研師や砥石メーカーを訪ねて本音で相談し、初対面にもかかわらず熱心なアドバイスをもらい、ありがたかったという。

おんべ1本の房は180枚が見た目もスマートでいいと思っていたが、「コロナに負けないようにぎやかに」と少し増やして200枚にする予定。組み立てまでの全工程を自身で手掛け、金色の紙垂や、手書きの木札などを取り付け「神が宿る」おんべが出来上がる。トウヒは水に漬けて湿らせてから引くこと、削った1枚1枚を平らに保つこつ、夫婦げんかをしないことなど、師匠たちの教えを胸に研さんは続く。

長田さんは「諏訪の人たちが楽しみにしている御柱祭でさまざまな場面を演出するおんべ。まだまだだが、大勢の人のお世話になってここまで来られた。元気なうちに教えたい。状況は変わるかもしれないが、できることをやるのみ。興味とやる気のある人を待ってます」と話している。

問い合わせは長田さん(電話0266・73・5945)へ。

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