2021年2月11日付

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日増しに寒さが緩むこのごろ、土手にはフクジュソウが咲き始め、学校では薄着の子どもたちが元気よく駆けている。そんな中、心まで春めく光景に出会った。蒸気機関車が多色のニットを着飾り、見物人の歓声を浴びていた▼辰野町の荒神山公園に展示されている「D51」。町の職員有志が人気漫画をヒントに、鬼と闘う剣士の着物柄のニットを車体へ巻き付け、節分の邪気払いと新型コロナ退散への願いを表現した。作品の映画版は列車が舞台で、関連付けた演出も見事だ。今月14日までの期間限定で飾る▼職員たちは「コロナ禍で遠くへ出掛ける機会が減ったけれど、地元で気晴らしができるものを」と考えた。賛同した町内業者が緑と黒の市松模様や薄紅色の麻の葉模様など、ニットを50枚用意。彼らの思いをつむいだ編み物は、風格漂う黒塗りの車体を華やかに彩った▼本紙記事で紹介した後、何度か現地を訪ねると、そのたびに記念写真を撮って喜ぶ人の姿が見られる。近くのホテル関係者は「見物した家族がランチを食べに来てくれた」と表情を崩す。アイデアと熱意が、いろんな人の笑顔を呼び起こしている▼風にそよぐニットを見て、あることわざを思い出した。「冬来たりなば春遠からじ」。つらい時期を乗り越えれば、幸せが訪れる―。世の閉塞感を打ち破るのは、小さな発想の種を大切に育て、形にしていく取り組みなのかもしれない。

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