2021年2月12日付

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お昼時、買い物袋を提げた客が飲食店から出てくる。顔がほころんでいるのは手にした弁当の温かさに心躍るからか、先刻までの店主との楽しい会話の名残だろうか。この頃、地元でこんな姿をよく見掛ける▼富士見では町を挙げて地元店応援のキャンペーンを張り、官公庁や企業に働く人たちも自前弁当をしばし休んで各店の仕出しを利用している。客足途絶えた店の減収を補い切るには及ばないが、店主は「町民の気持ちがうれしい」と心を温める▼地域の中でも、店の苦労を案じつつも「良い機会を得たと思えた点もある」との声が聞かれる。地元店のおいしさや魅力を再発見したことだ。同町では平常時、外食費が年間5億円も町外に流出しているという。その一部でも町内にとどめるきっかけになればいい▼無論、店主たちも待つばかりではいない。富士見駅前の商栄会は今月23日の「富士見の日」を特製弁当やさかなと地酒をセットで楽しんでもらおうと準備している。「記念日を祝って特盛で」と名取勇会長の声掛けに加盟6店の主が腕を振るう▼老舗店は人気の看板メニューを集め、店を継いだ若手は酒に合わせた創作料理にも挑戦。サービス精神を盛りすぎて採算が合わず、「最初で最後」と苦笑も漏れる。幾度も不況の荒波を耐え越えてきた店主たち。たくましい商売魂がこもったこの日限りの弁当は、勇気づけの隠し味が効いている。

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