2021年2月25日付

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テニスの全豪オープンで大坂なおみ選手が2度目の優勝を果たした。四大大会23勝のキャリアを誇る39歳のセリーナ・ウィリアムズ選手(米国)を2―0で圧倒した準決勝が特に印象深い▼試合後の会見で、ミスの原因を問われたセリーナ選手は、込み上げる感情を抑えきれず「分からない。これで終わり」と語り、会場を後にした。自ら切り開いた未踏の領域に到達した大坂選手の実力を認めつつ、世代交代を拒否するプライドと自身のふがいなさへのいら立ちが交錯しているように見えた▼諏訪ゆかりの島木赤彦や今井邦子を見いだした明治の詩人、河井酔茗に「譲り葉」という詩がある。新葉が出ると前年の葉が落葉するユズリハを親と子の命に例え、子どもたちに「何を欲しがらないでも凡てのものがお前たちに譲られるのです。太陽の廻るかぎり、譲られるものは絶えません」と語り掛ける▼さらに「世のお父さん、お母さんたちは何一つ持つてゆかない。みんなお前たちに譲っていくために、いのちあるもの、よいもの、美しいものを、一生懸命に造っています」と言い切る。そしていずれ譲る側になることを優しく諭す▼世代交代の季節である。学校や職場、地域に譲り受ける人と譲り渡す人がいる。酔茗のように、次の世代のために生きてきたと言えるだろうか。一生懸命であればこそ譲り渡す難しさもある。セリーナ選手の涙が教えてくれる。

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