伊那の佐藤さん 被災故郷に「ブドウの学校」

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福島県郡山市で「ワインブドウの学校」を始める佐藤浩信さん

2011年3月の東日本大震災で被災し、福島県伊達市から伊那市に移住した果樹農家の佐藤浩信さん(61)が、ワイン用ブドウの栽培家を育てる「ワインブドウの学校」を福島県郡山市で始める。震災から10年。ワインブームといわれる中、新たなチャレンジとしてワインブドウに着目した。世界に通用する高品質なワインブドウの栽培を持続可能なビジネスとして確立することを目指す。

佐藤さんはもともと伊達市でリンゴやサクランボを栽培し、主に贈答用として販売していた。しかし、福島第1原発事故による放射能の風評被害を受け、取引先から契約を打ち切られたことなどをきっかけに、11年5月に伊那市西箕輪に移住した。

「ゼロからのスタートだった」という伊那では新たに土地を借り、リンゴやモモ、カキを栽培した。だが再び困難に見舞われる。一昨年10月の台風19号で収穫間際だったリンゴが大きな被害を受けた。「リンゴを無駄にしたくない」と傷付いたリンゴで発泡酒「シードル」を作ることを計画。クラウドファンディングで資金を集め、何とか苦境を切り抜けた。今後は多少傷が付いても売れる加工用のリンゴにシフトするとともに、風害に強いブドウの生産を増やすことも決めた。

「復興という言葉はあまり好きじゃない。元に戻すのではなく、前に進むことが大切だ」と佐藤さん。二度の被災を通じて感じたのは農家として経営を安定させていくことの難しさだった。そんな中で着目したのがワインブドウだった。震災後、ワインブームもあり、「取っ掛かりやすい」と考えた。

「ワインはブドウの質で8割が決まるといわれ、ブドウ栽培は重要な要素だが、新興産地ではブドウの質や収穫量が上がらないなど多くの問題を抱えている」という。いいブドウを作るためには「がむしゃらではなく、確かな知識と経験に基づく技術教育が必要」とし、「学校」を立ち上げることにした。実力と経験を兼ね備えた講師陣が実践的な指導に当たる。

もともと50歳になったら果樹栽培の指導をしたいと考えていたが、震災で頓挫することになった。その夢の実現とともに、福島の農業をレベルアップしていきたいという「使命感」もある。

「自分もワインアカデミーに通い、刺激を受け、仲間や知識を得た。長野に来て、気候風土の違いによる農業の難しさも分かった。そうした経験を生かし、日本式のワインブドウの栽培方法を確立したい」と意気込む。

「ワインブドウの学校」は4月17日開校予定。

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