2021年3月7日付

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人は時の流れの中に生きている。感じる時間の長さは一様ではない。〈老齢は明らかに迅速なり〉と格言にある。そのさなかにあっては長く感じたはずなのに、過ぎてしまえばアッという間だった。その感覚が年とともに短くなっている▼年を重ねるほど体感時間は短くなると、「ジャネーの法則」は説明している。たとえば5歳の時の1年は全人生の5分の1。かたや50歳では50分の1と10倍も速く感じられる。似たような出来事が積み重なる「パターン化」も加わり、時間は加速するばかりである▼ギリシャ語には流れていく時間を指す「クロノス」に対し、「カイロス」という全く違った時間概念があるという。ある出来事を境にして、その前と後で世界の様相が一変し歴史に断絶が生じる「時間」がカイロスであると、作家の佐藤優さんの著書に教えられた▼2011年3月11日の東日本大震災と福島第一原発事故は、日本人にとってまさしく「カイロス」だろう。未曽有の災害によって震災の前と後で人生を変えられた人も多いに違いない。10年という歳月を長いと感じるか短いと感じるか、捉え方は人それぞれだろう▼10年前に感じた心の痛み、被災者への思いが薄まってはいないかと自問する。震災や津波に大切な人を奪われた人にとって時間は止まったままかもしれない。支え合いが必要なコロナ禍の今、忘れてはいけないことを胸に刻み直す。

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