2021年3月11日付

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米国のロック歌手ブルー ス・スプリングスティーンに「マイ・シティ・オブ・ルーインズ」という歌がある。ブルースの全ての歌詞を日本語に訳している上伊那郡辰野町在住のフォークシンガー、三浦久さんの対訳は《廃虚と化したぼくの街》だ▼舞台はブルースが青春時代を過ごしたリゾート地のニュージャージー州アズベリー・パーク。かつての輝きを失って荒廃した町の情景と、取り残された人間が絶望から 立ち上がろうとする姿が描かれている▼2001年9月11日に起きた米同時多発テロの直後、ブルースはテレビ番組に出演し、ギター一本でこの歌を歌った。視聴者は崩壊した世界貿易センタービルとニューヨークを重ねた。理不尽な死への憎悪と不安が渦巻く中、犠牲者のために祈り、心に宿る愛と平和を信じて立ち上がろうと繰り返し訴えた▼東日本大震災の被災地を支援する人たちを追った弊紙の連載企画「被災地に寄り添って」を読んだ。久しぶりに絆という文字に接し、被災地とつながり続ける人々の誠実さに感動した。同時に、10年という時間と忙しい日常に置き去りにしてきた絆を思った▼ブルースはステージで「君たちの一生は保証できないが、今日この一夜だけは保証する」と語ったことがある。一人ひとりができることは限られている。愛する人を亡くし、古里に帰れない人たちが立ち上がる日を、静かに祈る1日にしたい。

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