2021年3月17日付

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生命に学ぶ―を大切にする校風が感じられたひとときだった。卒業生への最後の授業はいかにも上伊那農業高校らしかった。新型コロナ対策で卒業式後のホームルームも時間が限られていて、下校の時刻まで、もう10分もない中での出来事だった▼畜産が専門の先生だった。「最後の授業をやるぞ」と言うと、チョークを握って、黒板に大きく「乳」と書いた。漢字の成り立ちを説明するために「爪」「子」「レ」に分解し、まだ首が座っていない乳児の頭を支えて授乳をする姿だと教えた。そして支える手を表している「爪」の部分を赤いチョークでなぞった▼「牛は生まれながらに自立が求められていて、自分の力でおっぱいまでたどりつかないとミルクが飲めない。だけど人間はそうじゃない」と語り掛ける先生。そして「みんな赤ちゃんの頃の記憶はないかもしれんけど、人間はずっと誰かに支えてもらって命をつないできた」と話した▼生まれたばかりの子牛がすぐに立ち上がる様子を見てきた動物コースの生徒なら、実習で何度も感じたことだろう。他コースの生徒にしてみても、コース選択前に体験した牛の飼育を思い出したかもしれない▼自立へと羽ばたく卒業生に「赤で書いた方の人になっていく頃なんやな、みんなは」と呼び掛けて、授業は終わった。いろんな人を、いろんな場面で支えられる人になってほしい―との願いが伝わってきた。

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